星野岑山 プロフィール

星野岑山

私の書観

例えば、楷書の中に隷書の筆意を、草書の中に篆書の筆法を暗々裏に盛り込み、融合させることができれば、そこに自分自身の新しい用筆が創造できるのではないかと、また、漢字と仮名との調和統一を用筆という点において図ることができれば、そこに今日の日本の書と呼ぶに相応しい表現の方向を見出せるのではないかと考えます。そしてさらに、書の筆意に、題材とする詩歌文章の意味を象徴的に託すことが出来ればと思います。

常にそのようなことを温め、また、その辺りに悩まされながら、作書にあたってきました。

現代の書家の多くが、書というものを単に造形のための造形として捉え、筆墨の特性をことさらに強調することに表現の在りようを求めているように見えます。それらは、書の本質を見誤った、滑稽な発想による空しい作業のように私には思えてなりません。

さまざまな書体の筆意の融合、筆意と文意の調和、そして何よりも古典の普遍性を如何に現代に生かすか、それらが、私が、私自身の書に求めるものです。